ドーパミンに支配された「偽りの達成感」
仕事に慣れ、心の隙間に滑り込んできたのは、mixiやMobageといったソーシャルゲームだった。
ネット上の交流、キャラクターの育成、イベントのランキング。現実世界では決して得られない「目に見える成長」と「達成感」に、私はどっぷりと浸かっていった。
だが、それは破滅への入り口だった。
1枚、あと1枚。青天井の泥沼
当時のガチャには、今のような「天井」など存在しない。
一つのキャラクターを完成させるには、同じカードを4回進化させなければならない。最大効率を求めるなら16枚。しかも「期間限定」というタイムリミットが、冷静な判断力を奪う。
当たりを引くまで回し続ける。脳内にはドーパミンとノルアドレナリンが溢れ出し、指が止まらない。1枚、あと1枚。
その渇望が、クレジットカードの限度額を食い潰し、ついには「リボ払い」という名の底なし沼へ私を突き落とした。
承認欲求を「課金」で買うという経営ミス
ソシャゲは残酷なまでに効率的だ。
課金さえすれば、わずかな隙間時間で「何かを成し遂げた錯覚」を得られる。レアカードを手にすれば、手軽に自己顕示欲と承認欲求を満たせる。
イベントは時間と課金をすれば上位に入賞して限定カードを入手できる。終了間近になると周りもブーストをかけてきてこちらも負けじとブーストをする。
当時の私は、自分自身の価値を、画面の中のデータに変換していた。
12時間労働で摩耗した精神を、課金という名の安易な「自己投資(の皮を被った浪費)」で埋めようとしていたのだ。
転換点:最強のデッキと、200万円の「負債」
ふと我に返った時、画面の中には「最強のデッキ」が鎮座していた。
だが、手元の利用明細には、200万円を超えたリボ残高という無慈悲な数字が突きつけられていた。
最強のカードは、私の人生を1ミリも守ってくれない。
この事実に気づいた瞬間、冷や汗とともに「自分株式会社」の倒産危機を直感した。
私はその場でアプリを削除した。
偽りの万能感を「損切り」し、震える手でカード会社に電話をかける。泥臭い現実を生きるための、これが私の真の「創業」だった。



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